【分かりやすく解説】バイオ燃料(バイオエタノール)の解説と問題点について

バイオ燃料

2000~2010年頃に一度大きく脚光を浴び、その後ユーグレナがバイオジェット燃料をミドリムシで作るというニュースによって、また話題となっているバイオ燃料。

一般的には、環境負荷の低い石油の代わりになるエネルギーというイメージだと思いますが、そのバイオ燃料・特にバイオエタノールの問題点も含めて紹介していきたいと思います。(第一世代と呼ばれるバイオエタノール)

バイオ燃料とは

バイオ燃料の種類

バイオ燃料は、一言でいうとバイオマス(生物資源)を原料にした液体燃料やガスのことです。バイオマスは、木材や紙、動物の死骸、糞尿などのことを指します。

石油や石炭の化石燃料との違いは、短い時間軸で再生産・再利用が可能だという点です。化石燃料が、何億年というようなスパンで形成されたものに対して、バイオマスは多くとも数十年のスパンであることから、持続可能なエネルギーの選択肢として着目されています。

その中で最もフォーカスされているのが、ガソリン代替のバイオエタノールです。

バイオエタノールの原料と作り方

バイオエタノールの作り方は、簡単に言うと焼酎などの蒸留酒と同じような構造です。酵母の発酵の力でアルコールを生成し、それを蒸留して濃度の高いアルコールにすることで代替エネルギーとして使用できるようにします。

そのため、酵母のエサになる糖やデンプンが必要で、その原料としてサトウキビやトウモロコシなどが使われることが多いです。

廃棄物の有効活用

サトウキビから砂糖を精製する過程で出てくる廃糖蜜(モラセス)と呼ばれる廃棄物の一種で、糖質を含んでいることから、発酵の原料として、バイオエタノールを作るのに使われています。

また、サトウキビの絞りカスからも、バイオエタノールが作られたりしています。

農作物の転用

もう一つは、アメリカやブラジルなどに代表されるようにトウモロコシやじゃがいもなどの農作物(の可食部)から製造するというパターンのものです。

トウモロコシから作る主な方法は、乾燥トウモロコシを細かく粉々にして、水を加えて発酵させるというものです。

農作物からバイオエタノールの製造については、エネルギーの安全保障や国内の産業に対する政治的な観点も強く関わっています。例えば、アメリカだと石油の埋蔵量・輸出で優位な中東の産油国への依存度を下げるエネルギーの安全保障的な部分と農作物を使うことで農家の売上につながるというビジネス・利権的な部分に紐付いています。

一時期、脱石油の観点で推進されたバイオエタノールも、シェールオイルに出現やトランプ政権の方針によって下火になりました。しかし、環境問題を重視するバイデン政権に変わったことで脱石油・脱シェールとしての代替エネルギーとして、バイオエタノールがどう位置づけられるのか?は今後注目されます。

メリット

メリット

原料自体はカーボンニュートラル

バイオ燃料は植物の光合成によって生成・成長した部分を使うため、原料自体は排出量と吸収量が同じのいわゆるカーボンニュートラルと言えます。

しかし、後述するように間接的にエネルギーを使っているため、厳密には純粋なカーボンニュートラルではありません。

再生産が可能

化石燃料は作られるまでに何千万〜何億年というような時間のスパンなのに対して、サトウキビやトウモロコシなどは毎年栽培が可能です。

問題点(デメリット)

デメリット

土地利用の競合(食物との競合)

産業レベルで使用するような量を生産するのであれば、当然原料を大量に生産する必要性が生じることから、そのために土地が必要となります。そのため、土地が競合することで、他の農作物などの食物と競合することになります。

トウモロコシや大豆の場合はもっと顕著で、バイオエタノールに使用することでトウモロコシや大豆の価格に影響するので、食用と燃料用でダイレクトに競合が発生します。

原料は、元々が植物なので成長するのに伴って、その土地の養分を吸い上げ、収穫物として土地から外に持ち出されるため、合わせて養分もその土地から持ち出されることになります。そのため、その土地で中長期的に栽培するには、肥料が必要になるため、原理としては農業と同じです。その肥料が、化学肥料を使う場合は、製造段階などで間接エネルギーを消費するため、こちらも環境負荷の問題が付随します。

特に、ビジネスでの収支を考えると面積あたりの収量が重視されることから、肥料をガンガンに使うことや条件の良い食物栽培用の土地を使用するなどの問題点があります。その例として、乾燥地や荒れ地など農作物ができないような土地でも栽培が出来るということで注目されたジャトロファ(ナンヨウアブラギリ)と種子から油が取れる植物があります。

これもサトウキビのように、使い道に困っているような荒れ地を有効活用するという前提に立った場合には、有効な打ち手となることが考えられますが、単純にエネルギーの視点から大規模にビジネスで行う視点だち、種子の生産性や収穫のための効率の観点での採算性が良くないことから、結果的に良い条件の土地が使われてしまうといった危険性をはらんでいます。

間接的にエネルギーが必要

間接エネルギー

原料自体はカーボンニュートラルですが、原料をオイルに加工するプロセスの中でエネルギーを消費(間接エネルギー)するため、その点を踏まえるとカーボンニュートラルではないと言えます。

間接エネルギーに関しては、太陽光や風力などのいわゆる再生可能エネルギーで賄うことで環境負荷が下がるとは思います。ただ、個人的にはEVにしてその電力を使った方がエネルギー効率がよいのでは?と思います。

まとめ

このように、バイオ燃料については砂糖精製に出てくる絞りカスのような廃棄物を有効活用するといったスポット的な使い方だったり、バイオガス発電など間接エネルギーの消費が少なく、構造がシンプルなモノについては活用していくほうが望ましいと思いますが、上述したような問題点からバイオエタノールなど石油代替としての大規模なエネルギーを想定した場合、様々な問題が付随してきます。

かつて、人類のエネルギー需要が森林の回復力を超えたために、森林伐採→ハゲ山になっていった歴史があるように、バイオマス(生物)エネルギーで膨大なエネルギー供給を行うことには、構造的な無理が生じます。その辻褄を合わせるためには、上述のように間接エネルギーや肥料の問題が発生するため、主力で使うエネルギーとしては筋が良いとは思えないというのが個人的な見解です。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です