【書評】独立国家の作り方 | 坂口 恭平

独立国家のつくりかた 表紙

大人になってから、独立国家を作ろう!と本気で考えたことのある人は、いったいどれくらいいるだろうか?

独立国家と言っても、実際に主権国家として日本から独立したわけではないのだが、常識的に考えると、そんな狂ったことを実行に移しているのが、坂口恭平・・・この本の著者だ。

その独立国家を作った男の本について、紹介したい。

独立国家のつくりかた (講談社現代新書)

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そこには無限のレイヤーがある

レイヤーの捉え方というのがこの著書における最大のポイントだ。
レイヤーとは、切り口やフィルターという感じで捉えるとがニュアンスを理解しやすい。

我々は現代社会というあらゆるモノがシステム化された中で生活をしている。そのことで、物事を無意識に常識というフィルターを通して画一的に捉えてしまいがちだ。

本書の中で路上生活者がお金を使わずとも0円で家を持っていることなどを例に、世の中には無限のレイヤーがあり、現代社会に生きる我々がその中の極めて限定されたレイヤーで生活していることを示唆している。

畳一枚より40センチ長いだけの空間。狭くて大変じゃないですかと聞くと、彼はこう言った。

「いや、この家は寝室に過ぎないから」

僕は、意味がわからなかった。すると、彼は説明を始めた。

晴れていれば、隣の隅田公園で本を読んだり、拾ってきた中学校の音楽の教科書を見ながらギターを弾いたりできる。トイレも水道も公園にあって使い放題。風呂は一週間に一度、近くの銭湯に行く。食事は、スーパーマーケットの掃除をしたついでに肉や魚をもらえる。だから、寝室くらいの大きさで十分だー。

例えば、路上生活の家について、我々が考えると、部屋だけで庭がない。という風に捉える。しかし、彼らにとってはその家は公園の中にある一つの部屋、寝室に過ぎず、公園が彼らにとっての庭だ。

つまり、家という概念の捉え方が異なるのだ。その捉え方・視点を変えることで違うレイヤー(階層)が存在しているということに気づく。

社会にいる以上、ある種の共通認識が必要になるわけで、それがある種の社会通念として常識ものとして、人々に浸透した。しかし、それと同時にいつのまにか常識に囚われることで、いろんなものを見えなくなることに気付かされる。

そして、著者はある事故をきっかけに新政府を樹立するという行動を起こすようになる。

新政府の樹立

2011年3月11日に起きた東日本大震災。

当時の日本政府は、原発事故についての正確な情報を出さなかった。

著者は、そのことで国民の命を守るべき政府が、本当のことを言わず、国民のことを守ろうとしなかった政府は、政府ではないということで勝手に独立国家を作ってしまえば良いという考えに至った。

僕は、逃げるべきだと知りながら言わない政府というのはもはや政府ではないと認定した。つまり、現在は無政府状態なのである。政府がないのはまずいから、僕の方で一つつくってみようとしたまでだ。

新政府と言っても領土を主張し、日本国から独立するわけではなく、著者は生存権の死守=「自殺者をゼロにするために全力をつくす」ということを考え方の柱に活動を始める。

そこで、路上生活のお金を掛けずに生活を成り立たせるというのを参考に、DIYを駆使した避難計画や態度経済という新しい経済(相互扶助のイメージ)など様々な活動をしていく。

詳細は、ぜひ本書で読んでみて欲しい。

独立国家のつくりかた (講談社現代新書) 

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まとめ

この本は僕に日常での物事の視点を変えて見てみるという意識付けをしてくれた本の中の一つだ。

当時、僕はキャリアについて悩んでいた時期で、仕事に自分の人生の大きな部分を背負わせるのは止めて、まずは自分の身の回りの生活から自分自身が志向する生き方をしようと考え方を変えた頃だ。

会社の人事は他人が決める。その不確定な未来に自分の人生を委ねるのは馬鹿馬鹿しい。仕事は仕事としてちゃんとやるが、まずは自分の生活の中から、自分の人生のテーマである温暖化問題や持続可能なライフスタイルというものをしっかり考えていこうと思った。

このブログでも紹介している幅 允孝さんの本を呼んだのもちょうどこの頃で、僕の変化しようと思う背中を後押ししてくれた思いで深い一冊だ。

【書評】人と本との素敵な出会いを作る人 本の声を聴け-ブックディレクター幅允孝の仕事:高瀬 毅

本の声を聴け ブックディレクター幅允孝の仕事

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自分の生き方や将来がはっきり見えない、不安を持っている人にはぜひ本書を読んでみて欲しい。世の中には無限のレイヤーがあるように、視点を少し変えることで自分の可能性も広がっていくはずだ。

別に不安や悩みがなくても、視点を変えるという意識が自分の中に根付いてくると、いろんな角度から物事が見えることになるので、新しい楽しみに気づくなど単純に人生を楽しむという意味でも良いと思う。

ちなみに、ホントに独立国家をつくろうとすると

本著では、著者が生存権を非常に重視していて、今の政府がそのことに対応出来ていないことから、自ら新政府を樹立させた。ただ、新政府といっても領土を主張しているわけではなく、一般的にいう「芸術活動」を行なっている。

実際に日本国から独立を企てた場合、日本ではそれは内乱罪という罪に問われるので、注意しましょう。

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