【書評】週末は田舎暮らし—ゼロからはじめた「二地域居住」奮闘記:馬場 未織

 

  • ゆったりした時間を過ごしたい人
  • 自然の多い環境で子どもを育てたい人
  • 人とのつながりを感じる生活をしたい人
  • 社会や人のためになるような仕事をしたい

人それぞれ理由は様々だが、以前よりも地方や田舎で生活する人の存在を見聞きすることが増えた感じがする。

日本の社会が成熟したことで社会の関心が、年収や出世などのステータスなどから個人のライフスタイルや日常のあり方に少しづつ向き始めていることと無関係ではないだろう。

僕自身、時間の流れがゆったりしているところに身を置きたいと思うことは多いが、今すぐに拠点を田舎に移して、仕事や生活の全てを変えるほどの覚悟やきっかけがないのが正直なところ。そういう思いを持っている人は、おそらく僕だけではないはず。

しかし、そういう極端な発想ではなく、夫婦と子ども3人の家族で平日は東京で仕事をし、週末に田舎で暮らすというライフスタイルを実践している人がいた。
それが、今回読んだ「週末は田舎暮らし」の著者の馬場未織さんだった。

田舎が欲しい → 理想の土地を探す

馬場さんは、東京生まれ東京育ちで田舎を持っていない人だ。

彼女の長男が生き物にどんどんと興味を持つようになり、それにつれて東京というと都会の中で育てることが正解なのかと考えるようになる。

それからしばらくして馬場夫妻は、子どもたちを思う存分遊ばせられる環境で暮らすことを人生の贅沢として選択し、田舎に家を探すようになる。

限られた財源の中で、高級車などを買う贅沢よりも平日は東京と週末は田舎という往復生活ができる環境を彼女達は選択した。

当初は神奈川県方面で土地を探していたが、中々見つからず、千葉県に範囲を広げ、南房総で運命の土地と出会った。

土地を探し始めてから3年の月日が流れていた。

週末は田舎暮らし

ようやく探していた土地が見つかり、平日は都会で働き、週末は田舎の8,700坪ある土地に築100年以上の家屋に過ごすという往復生活が始まった。

草ぼうぼうの敷地内の草を刈り、敷地内の草刈りが終わったと思い、翌週来てみるとまた草がぼうぼうで草刈りに追われる日々。

川でエビを取った子どもと一緒に食べたり、畑で野菜をつくたり、時にはイノシシに畑を荒らされるなど、都会では感じることのできない人と生物の関係を気付かされることもある。

畑で野菜の作り方を近所の農家の方に教わったり、地域のヒトとのつながりを通じてどんどん南房総の地域を好きになっていく。

地域と一緒にNPO活動

そんな都会と田舎の往復生活の中で年月を経ていく中で、馬場さんは里山地域に介在する様々な課題に対しての問題や自分が住んでいる南房総の地域に自分が何を出来るのかを考えるようになっていった。

そして、地元の人達とNPO法人を立ち上げた。自分たちが実感したことを活動に変えていく試みを始めた。

  • 都会の子供たちを南房総の里山で自然と触れ田舎暮らしを体験する「里山学校」
  • 南房総の野菜の美味しさを実感してもらうために目黒区洗足地域の人達と一緒に「洗足カフェ」
  • ヒト・モノ・コトの関係を作る里山環境の拠点として作った「三芳つくるハウス」

自分にとって第二の故郷になった南房総の魅力を外から語るのではなく、内側で見えるものを伝えていくという視点で伝え、共感され、巻き込んでいくような活動を目指している。

まとめ

僕にとって、この本は佐賀県の武雄図書館でこの本を見つけ、表紙のウッドデッキの写真と帯の山崎亮氏の「すごくアナログだけど、とても近未来的な生活だ」というコメントを見て、思わず買ってしまった思い入れのある本でもある。

読んでみて、最初は週末に過ごす田舎暮らしの魅力的な部分が満載なイメージの本かな〜と思ったけども、南房総の土地に辿り着くまでが思ったよりも長く、良い面だけでなく苦労面や悩みなどもリアルに書かれていたのが印象的だった。

実際に田舎暮らしのリアルな部分を知ってもらった上で、田舎暮らしや二地域居住のライフスタイルの素晴らしさなどを発信したいという著者の思いがあるのだろう。

巻末のあとがきで、こんな記述がある。

農村から年に人口が流出するという当たり前のような流れとは真逆の動きをとり、里山暮らし、田舎暮らしの豊かさの輪郭を示すことで、ここが「これからの住まい」の選択肢のひとつできれば、過疎化の進む中山間地域の未来にわずかな光がさすのでは、という思いがありました。

インターネットが普及したことで、地域を知ること、そこの物を買うこと、そこに住む人達とつながることが簡単に出来るようになった。

まず知って、関心を持って、そこに実際に行ってみることで、自分にとって大切な場所が見つかるかもしれない。僕自身もそんな気持ちになる一冊だった。

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