夏の暑い日に都市公園など緑の多い場所に行くと、街中よりも涼しいと感じます。
それはなぜでしょう?
それは、樹冠による”熱の遮断”、水分の蒸発による”気化熱”、夜間の”放射冷却”と呼ばれる機能が大きく関連しているからです。
これらによって、緑地と言われる芝生や森のような場所は、コンクリートやアスファルトに覆われている場所よりも温度が上がらずに涼しく過ごすことができます。
この記事では、その理由やメカニズムを解説していきたいと思います。
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地面の水分と植物の蒸散による気化熱
緑のある場所が涼しさは、地面の保水性という土地の条件と植物の蒸散という性質によってもたらされるものです。
地面の保水性
アスファルトの場所と植物の生えている場所だと、地面の水分の状態が異なります。地面に水分があると、太陽からの熱で地面の温度が高くなるときにその水分が蒸発する際の気化熱(水分が気体に変わるのに、その熱をエネルギーとして消費する)によって、温度が上がるのを防いでくれます。
都市部は、アスファルトのような保水性のない地面のため、熱が逃げないので相対的に植物のある場所の方が地面の温度が上がりにくいです。そのため、道路の上よりも水分のある土の上の方が地面の温度が上がりにくいので、涼しいのです。打ち水は、この気化熱の原理を暑さ対策に応用して、地面に水分をまいて地面の熱を大気に逃しています。
植物の蒸散
植物は蒸散という機能によって、根から吸い上げた水分を使って葉などの温度が上がりすぎないように水蒸気にして放出しています。植物は自分で気化熱を発生させる状態を作り出しています。
樹冠による光の遮断(昼間)
大きな木がある林のような場所だと、樹冠が太陽の光を遮ってくれます。そのため、樹冠がある森や林は、昼間に地面や樹冠の下の空気の温度が上がるのを防いでくれるので日陰になっている場所は涼しいです。
ちなみに、蒸散と植物に光を遮断させて暑さ対策に応用しているのが、ゴーヤなどのつる性の植物を使って窓を覆うグリーンカーテンです。
地表面からの放射冷却
夜は昼間と違って太陽の光がないため、地面が暖められず、地面から大気に熱が放出されて地面の温度が下がります。*1 この現象を「放射冷却」といいます。その放射冷却は、
草地の場合
樹冠のある森や林のような場合
一方で、樹冠があるような場所は、昼間は光を防いでくれますが、夜は地面から放射される熱を逆に遮ったり、反射して大気に逃げるのを防ぐので、温度が草地に比べて下がりにくくなります。そのため、夜は芝生のような場所の方が地面の温度が低く、涼しいです。
*1:実は昼間も地面から熱は放出されているのですが、それよりも暖められるエネルギーの方が強く働いているので昼間はそう感じません。
昼間は森や林、夜間は草地が涼しい
昼間は樹冠が太陽光と熱を遮断するので木陰などが涼しく、夜は放射冷却によって芝生のような場所の方が涼しい。
このことを知っておくと、夜の散歩など
MEMO:砂漠の放射冷却
放射冷却の典型的な例は、砂漠です。
よくアニメなどで、昼間は灼熱のような暑さなのに、夜は服を着込んだり、焚き火であたたまるようなシーンが出てきます。
この昼と夜の急激な温度差も放射冷却によるものです。
特に砂漠の場合、乾燥気候で水分が少ないことから上空に雲がない状態が多く、夜はキレイな星空が見られるように空気が澄んだ状態が多いです。そのため、放射冷却による上空への放熱を遮断するものがないため、より温度が下がりやすい環境です。
そのため、昼と夜の急激な温度差が発生します。