2019年、東日本各地に甚大な被害をもたらした台風。(台風15号、19号)
大雨によって、河川は氾濫し、堤防が決壊するなどこれまでになかったような被害が起きています。
ただ、これは2019年に限った話ではなく、2018年の西日本豪雨、2017年の九州豪雨、2016年の北海道の台風・大雨など、ここ数年は毎年のように日本のどこかで台風や大雨による大きな被害が発生しています。
もはや異常気象ではなく、異常気象が起きることが普通になっていると言われることもあるが、そのような異常気象の背景にあるのが、地球温暖化の影響だと指摘されています。
IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の報告書でも、温暖化が進行していくに従って台風やハリケーンなど頻度や強度が増加すると指摘されています。
では、なぜ温暖化が進行すると、台風などの被害が増加するのでしょうか?
ニュースなどでは、さらりと触れる程度で流され気味になので、ここで台風のメカニズムを踏まえて解説していきます。
台風のメカニズム
そもそも、台風とは何のことを指すのか?台風は、風速17m/s以上の熱帯低気圧のことを言います。
熱帯低気圧は、赤道近くの海水温の高い地域で、水蒸気が発生すると上昇気流となって積乱雲を形成します。
水蒸気は空気よりも軽いため、発生すると上昇していきます。すると、上空でその水蒸気が冷やされることによって雲が作られます。大量に発生した水蒸気が冷やされ、急速に発生する雲が積乱雲と呼ばれます。
熱帯で発生した低気圧は、渦を作りながら移動します。(コリオリの力)その渦の風速が17m/sを超えることで台風となるのが、台風発生のメカニズムです。
日本に台風がくる場合
日本の場合、台風は進路である太平洋の日本近海の海水温が高くなければ、台風に水蒸気が供給されなくなるため、次第に勢力が弱くなっていきます。従来だと、熱帯域で台風が発生しても、日本近辺の海水温が高くない場合には、勢力が減退した状態や途中で熱帯低気圧に変わるような状況が多くありました。
一方で、台風19号が甚大な被害をもたらした背景として、発生時の日本近海の海水温が高かったということが指摘されています。
台風19号 平地も豪雨に 海水温高かったことが要因:NHK NEWS WEB
進路上の海水温が高いと台風の源となる水蒸気が供給され続けるため、勢力が維持・あるいは強くなって進んでいきます。そのため、今回の台風のように、巨大なまま東日本に直撃するような状況が生まれやすくなってしまいます。
温暖化はどう影響しているのか?
温室効果ガスが増加することによって、大気が熱を吸収しやすくなることで気温が上昇することがざっくりいうと地球温暖化のことを指します。
ただ、太陽光や地上での人間活動によって発生した熱はそのまま大気を温めて温暖化されるという簡単な構造ではなく、その熱を実は海洋が吸収しています。そのため、温暖化は気温だけでなく、海水温ともリンクします。
海水温が上昇すると、日本近海でも台風に水蒸気が供給されやすい状況になるため、より台風の勢力が強くなったり、台風自体の発生頻度が増加することを助長すると考えられます。そのため、結果として温暖化の進行によって、強い台風の被害の頻度が増えることが指摘されています。
これが、大きな台風による被害の要因が、地球温暖化であると言われる理由です。
この記事の内容は、自然科学のメカニズムによる一般論で説明したものです。そのため温暖化によって、日本列島に台風の被害が拡大するという具体的な事象との因果関係までは証明されていません。(構造が複雑すぎるため。)ただ、一般論として、メカニズムで説明ができてしまうため、温暖化によって主に台風のリスクが高まるということについては言えます。