熱中症の話題が出る際の暑さ対策として聞かれる打ち水。
打ち水をすることで、周辺の体感温度が下がると言われていることから、夏の時期にイベントなどでもよく行われています。
打ち水については、その効果について色々な議論があり、結局どうなのよ?というところが分かりにくい部分があります。そこで、打ち水のメカニズムを整理して、解説していきます。
打ち水の歴史
打ち水の起源については、正確には分かっていませんが、少なくとも江戸時代には、庶民の間で日常的な慣習として行われていました。
当時は、現代と違って道がアスファルトで舗装された道路ではなく、土であったため、土埃が立つのを防ぐ意味合いで打ち水が行われていました。現代のイメージでは、部活前などに土のグラウンドにスプリンクラーを使って水をまいて、埃が立たないようにしていると同じです。
時代を経て、行われなくなった打ち水ですが、ヒートアイランド現象が注目されるようになってから、その対策として脚光を浴びるようになりました。
ヒートアイランドのメカニズム
道路や建物の素材であるアスファルトやコンクリートは、熱を蓄える性質を持っています。
そのため、夏場の強い日差しで熱を蓄え、夜でも熱を帯び、周辺に熱を発します。そのため、建物が密集している都会では、夜でも涼しくならず、熱帯夜が起きやすくなります。(ヒートアイランド現象)
ヒートアイランド現象については、こちらの投稿で詳しく解説しているので、良かったらご覧下さい。
また、温暖化問題への関心も相まって、ヒートアイランド現象に対する個別の対策も注目されるようになりました。
①日差しを防いで、コンクリートの温度上昇を防ぐ
②コンクリートの熱を放射させる。
①は、予防のようなイメージでコンクリートに日差しを当たらないようにすることで、家の壁やベランダなどの温度上昇を防ぎます。具体的には、すだれやグリーンカーテンなどが代表例です。
グリーンカーテンは日差しを防ぐことに加えて、蒸散による気化熱(事項で解説します)による冷却効果も期待できるため、非常に効果的でオススメな対策です。
②については、熱を蓄えたコンクリートから熱を奪うことでその場が涼しくなるというアプローチです。それが、今回のテーマの打ち水が該当します。
打ち水のメカニズム:気化熱について
打ち水をすると、冷却効果があるのは気化熱によるものです。
水は、周りの熱を吸収することでに蒸発して水蒸気になろうとします。水が液体から気体に変わる際に周辺の熱がエネルギーとして使われます。これは周りの熱が水に転移するだけではなく、蒸発するためのエネルギーとして使われるので、熱が失われます。そのため、結果として熱が奪われて冷却効果が起こります。(気化熱)
身近なところでは、夏にシャワーを浴びたあとに濡れたままだと涼しく感じるのも、体の表面についた水が熱を奪って蒸発している気化熱によるものです。
打ち水の効果
打ち水による効果は、水を巻いた場所の熱が気化熱によって温度が下がることによって生まれます。打ち水で地面や壁に撒かれた水は、周りの熱を吸収することでに蒸発して水蒸気になろうとします。その際の気化熱で、地面や壁の熱が水に奪われることで、その周辺に冷却効果が生まれます。
また、撒かれた水が地面などにあるうちは、先に水が熱を使って蒸発することで地面や壁の温度上昇を防いでくれます。
例えば、これ以上アスファルトの温度が温められることがない日没が近い時間帯に打ち水をすることで、昼間に蓄熱された熱を気化熱で奪って地面の温度を下げることで、夜に地面から熱を出すことを防ぐことができます。
そのため、夕方などに打ち水をしてあらかじめ、地面や壁の下げておくことで熱帯夜対策になります。植物を育てている人は夕方に水やりをする方が植物の成長にも良いので、合わせて打ち水をするのが良いでしょう。
打ち水をする際の注意
打ち水は、気化熱によって冷却効果が得られるが、場所や気象条件によって逆効果になる場合があるため、注意が必要。というのも、打ち水をして気化熱が起きた際に発生する水蒸気が悪さをする可能性があるからです。
水蒸気は、空気よりも蓄熱性が高いため、日差しなどが当たると温度が高くなります。
通常では水蒸気は、空気よりも軽いので、通水蒸気化したあとに大気に放出されますが、下記のような条件の場合は水蒸気が周辺に留まり、暑くなる可能性があります。
風通しが悪く、空気がこもる場所
ガレージのような空気がこもる場所だと、打ち水をした後に発生する水蒸気がその場から逃げず、その水蒸気が温められることで蒸し暑くなる可能性があります。
このような条件の場所では、打ち水をすると逆効果になる可能性が高いので、辞めた方が良いでしょう。
湿度が高い日
湿度が高い日に打ち水をすると、水蒸気が上空に逃げずにその場に留まりやすくなります。
そのため、打ち水をすることで水蒸気によってより湿度が上がって、ジメジメとした蒸し暑さを助長して逆効果になる可能性があります。
イメージとしては、湿度が高い日のシャワーを浴びた後になかなか濡れた髪が乾かない時が分かりやすいと思います。湿度が低い日は、濡れた髪の状態だと気化熱で頭の周りの熱が奪われて涼しいですが、湿度が高い日だと髪について水分が蒸発せず、周りの熱によって温度があがるだけなのでむしろ暑く感じることがあります。
同じように、打ち水も湿度が高くジメジメしている日にはやらないように注意しましょう。
おまけ:空気の流れを作って、打ち水をより効果的に。
打ち水によって、その周辺の温度を下げたときに室内もその冷却効果にあやかるには、空気の流れを起こして涼しい空気が部屋の中に入るようにすることが重要です。部屋の構造の違う2つのパターンで見ていきましょう。
吹き抜けがある場合
これは、空気の温度が低い方から高い方へと流れる性質を応用したものです。
家を風が流れるように吹き抜けにした状態で、打ち水をすることで両側に温度差を発生させて空気の流れを起こします。そうすることで、家の中に涼しい空気を通します。
吹き抜けがない場合
家の構造上、吹き抜けがない場合は扇風機などを使って、空気の流れを作り出すことで同じような効果が期待できます。
窓の手前に扇風機を置いて、部屋の中の空気を外に押し出すことで外の涼しい空気を部屋の中に取り込みます。扇風機を使った空気の入れ替えは、実感するレベルで効果があるのでおすすめです。
まとめ
打ち水はやるタイミングや条件を気にする必要はありますが、簡単に出来て、冷却効果を実感しやすいので、上手く取り入れて夏場をしのいでいきましょう。