一般的に、「森林を伐採する=環境破壊、環境に良くない」というイメージを抱くと思います。
これは、開発や木材を目的にした無計画な伐採によるイメージによるものだと思いますが、日本の森林や林業にフォーカスされたテーマだと、環境のために積極的に国産材を消費しましょう!という逆のニュアンスの発信にふれることがあります。
なぜ、国産の木材を使うことが環境に良いと言われるのか?
今回は、そのことについて簡単に解説していきたいと思います。
国内の森林の状況
日本は、国土の約2/3が森林という森林国です。その森林面積のうちの約4割が、人の手で植林された人工林で構成されています。
人工林が多い理由は、戦時中の軍需物資や戦後復興の木材需要の増加によって森林が伐採されたことを受けて、スギ・ヒノキが一気に植林されたことによるものです。
その後、値段の安い輸入材が入ってきたりしたことで、国産材の需要が下がり、林業の採算性が下がったことで多くの山林が放置されているという今の現状につながっています。
カーボンストック(炭素固定)
日本で木材を生産する場合、伐採したあとに植林をするため、仮に伐採した木材を燃料として燃やしてしまったとしても、中長期的には植林した木がCO2を吸収するので、大気中のCO2は増加しません。(カーボンニュートラル)
さらに木材として、建物や製品などに使われる場合、木材の状態で吸収した大気中のCO2を留めています。(カーボンストック)木材として、吸収したCO2をキープしつつ、伐採したと跡の場所で植林した木がさらにCO2を吸収するため、大気中のCO2を削減することになります。
そのため、持続的に木材の利用・植林・森林の管理をしていくことは、カーボン(炭素)をストック(貯留)しておくという観点で意味があります。
逆にいうと、今の日本では大部分の森林で木材が活用されず、森林の管理もされていないというのが現状です。そのため、国産の木材をもっと活用することで、産業の側面だけでなく、CO2の削減という部分でも効果があるといえます。
植物の炭素固定については、こちらの記事に書いているので参考まで。
CO2の吸収の効率性
森林は、成長段階によって吸収するCO2の吸収量が異なります。一般的に、若いほどCO2の吸収量が多く、高齢な森林ほどCO2の吸収量が少なくなります。
そのため、ある程度の段階で木材として伐採して、植林をし、またある程度の段階で伐採するというサイクルで土地を利用する方がCO2の吸収という観点では、生産性が高いといえます。
日本の森林の多くは、戦後に植林された物がそのまま伐採されず、管理もされていない状態のため、CO2の吸収量が高い状態ではないので、活発に森林利用がされることでCO2の吸収量もより多くなります。
森林保全
森林保全に関しては、CO2というよりも防災など広義的な意味での環境対策になります。台風や大雨の際に、よくニュースになる土砂崩れ。
これにも、森林管理という要素が大きく関わっています。
スギなどに代表されるような人工林は、最初高い密度で植林されます。その後、成長していくに従って、木が間引かれて行くのですが、前述のように森林が放置されて、管理がされなくなったことで、樹木が密集しているような状況の森林が多くあります。
樹木が密集していると、光が地面に届きにくく、下草が育たないことや各樹木の根が張りにくくなってしまうことで、土砂崩れが起きやすい森林になってしまいます。
これが、良くいわれる間伐が必要だといわれる大きな理由です。
また、秋ごろになるとよくニュースになる獣害の問題。
これも人里と山の間で緩衝地帯のような役割をしていた里山が、管理がされなくなったことで草や低木が茂り、動物が人里近くまで動きやすくなっていることが一つの要因と言われており、自然災害だけでなく、獣害問題なども森林管理と密接に関わっています。
まとめ
このように、現代のライフスタイルや社会システムになっていく中で、国内の木材を取り巻く環境が大きく変わったことで現在指摘される様々な森林に関する問題が発生するようになりました。
必ずしも、木材として活発に利用することを推進することだけが正解ではなく、そのまま森林の遷移を進めて、自然林にしていくなど、色々の考え方があると思います。
ただ、少なくとも今までは人間が手を加えていたことで維持されていた一つの安定していたシステムが崩れたことでの不具合が起きていることは事実で、そのシステムをなんとか維持する方向にするのか、あるいは全く別の森林の在り方を考えるのか?
日本は人間と森林(自然)の関係性を見直し、具体的にアプローチするフェーズにあるといえます。