地球の温暖化問題が、ニュースで取り挙げられるときによく出てくる海面上昇の問題。小さい島が海水に浸食されていくような映像を目にすることがあると思いますが、なぜこのような現象が起こるのか?
出てくるのはその事象ばかりで、メカニズムについてはあまりニュースやメディアなどで取り上げられませんし、逆に解説しているページは専門的過ぎて難しい場合が多いです。
そこで、このエントリーで海面上昇のメカニズムについて、専門性がない人も理解出来るように解説していこうと思います。
背景
19世紀にイギリスで起こった産業革命以降、人類の主要なエネルギーが石炭や石油、天然ガスなどの化石燃料に変わったことで、急激に乱開発、人口増加などが進んで行きます。それによって、消費されるエネルギーが激増し、地球は急速に温暖化に向かって行きます。
この100年ほどで、海水面は20cmほど上昇したと考えられています。そして、これからより温暖化が加速していく予測のため、21世紀に海面は26cm〜82cm上昇すると見られています。(IPCC第5次評価報告書より)
海面上昇の直接的な要因
海面上昇は温暖化によるものですが、その構造を見ていくと大きく2つのポイントが挙げられます。
・海水の熱膨張
・大陸氷河・氷床の融解
海水の熱膨張
これは、海が人類の排出した熱を吸収していることから発生します。
海は、人類が発生させた熱の90%以上の熱を吸収していると言われていて、加速度的に増加している温暖化によって海水温が上がり、海水が膨張するため、海面上昇が起きます。(IPCC報告書)
では、なぜ海水温が上がると海水が膨張するのか。
これは熱膨張と言われる現象です。
理科の授業で、輪っかに入る大きさ鉄のボールを熱すると、ボールが大きくなって輪っかを通らなくなるという実験をした人も多いと思いますが、それと同じ原理です。
物質は温度によって、体積が変化します。それは液体の水にも同じことが言えます。
そのため、地表面の7割が海に覆われている地球では、少し海水温度が上がるだけで大きな影響を及ぼします。
ちなみに、その吸収量は近年急激に増加しているという研究結果が出ており、見た目上は海が熱を吸収量していることで、大温暖化は鈍化しているように見えます。
しかし、これは海水温が上昇することによって生じる影響(サンゴの死滅や魚の生息域の変化など)や海が今のように熱を吸収しなくなったとき、大気や陸地での温暖化が急速に進む危険性を示唆しています。
大陸氷河・氷床の融解
大陸氷床は、陸の上に出来ている氷のことを指しています。
具体的には、南極大陸の氷河やグリーンランドの陸地部分の氷河です。
よく北極海の氷が溶けると、海面が上昇するのか?という話がテレビなどいろいろな場所で聞かれますが、海水が凍ってできた北極海の氷が溶けても海面の高さには影響は出ません。
では、陸上の氷河が溶けるとはどういうことなのか?
例えば、温暖化によって最高気温がこれまでー1度をだった地域で、気温が2度上昇すると気温は1度になり、氷が溶ける温度になってしまいます。それによって、永久凍土と言われていたような氷河が溶けるということが起き始めています。
南極やグリーンランドの氷河が溶けることで、海面上昇はm(メートル)単位の影響になります。
グリーンランド氷床が完全に消滅すると海面水位は7m上昇すると見込まれています。 出典:http://www.cger.nies.go.jp/ja/library/qa/7/7-1/qa_7-1-j.html
海面上昇がもたらす被害
海抜の低い島々
四方を海に囲まれた島国で特に海抜の低い大洋州やインド洋に浮かぶツバル、キリバス、モルディブと行った国々は現時点で、すでに大きな被害を受けています。
ツバルは、サンゴ礁の上に砂が堆積(たいせき)して出来た島で、満潮時に地面から海水が湧き出て浸水する被害が起きています。
ニュージランドへの労働移民やフィジーが移住の受け入れを表明したことから、ツバルの人たちの多くははこれらの国々へ移住することになります。
水の都ベネチア
2018年10月イタリアの古都ベネチアでの嵐や高潮によって、観光地として有名なサン・マルコ広場が閉鎖され、都市の75%が水没するという被害に見舞われました。
まとめ
護岸工事のような対策をすることで、局地的な被害を対応することは出来ますが、温暖化問題が解決されない限り、根本的には海面上昇を防ぐことは出来ません。
日本にいると猛暑や豪雨などの異常気象以外ではそこまで温暖化問題を実感しにくい部分があることに加えて、温暖化問題を巡っての政治的な対立や各側の主張が実態をより分かりにくくしています。
実際、温暖化問題は非常に複雑にいろんな要素が絡み合っていますが、基礎科学の視点で一つ一つの構造やメカニズムを考えることで、少し分かりやすくなると思います。