本著は、熊本県の営業部長のくまもんのデザインをしたクリエイティブ・ディレクター水野学さんの著書だ。今の仕事(マーケティング)になったばかりのころ、デザインに対して漠然とした不安を持っていた僕の背中をそっと押してくれた思い出の一冊だ。
いきなりだが、あなたは、自分のセンスに自信を持っているだろうか?
もし、自分にはセンスが無いと思っている人には、本書内のこの一節を送りたい。
センスのよさとはミステリアスなものでもないし、特別な人だけに備わった才能でもありません。方法を知って、やるべきことをやり、必要な時間をかければ、誰にでも手に入るものです。
センスとはなにか?という本書のテーマについて、内容を紹介しながら、僕なりの解釈を交えて見ていきたい。
センスとは何か?
本書の帯びて、センスについてこう述べられている。
センスとは、特別な人に備わった才能ではない。それは、さまざまな知識を蓄積することにより「物事を最適化する能力」であり、誰もが等しく持っている。
もう少し噛み砕くと、知識を得ることで判断する材料(比較材料)となり、それを使って自分の前にある事象をより望ましい形にするということだろう。
では、なぜ物事を最適化するためにセンスが必要なのだろうか?
数値化出来ない事象を最適化する
それを本著で水野さんはこう紐解いている。
「センスの良さ」とは、数値化できない事象の良し悪しを判断し、最適化する能力である
世の中は、ビッグデータに象徴されるようにIT技術の進歩、普及によって、20・30年前には出来なかった膨大なデータの処理や把握が可能となり、よりデータの存在が重要視(というよりもマスト)になっている。
しかし、数値化することのできない事象というものも存在する。
(正確にいえば、人類が数値化できていない事象という方が正しいと思うが。)
その事象に対して、アプローチするスキルがセンスということだ。
例えば、オシャレなどは、それ自体を数値化することは出来ないが、その状況・人によってセンスの良し悪しは確実に存在する。
なぜ、センスが重要なのか?
本著の中で、今の時代を「センスの良さ」が、スキルとして求められている時代と言っている。
これはなぜか?
家電の例で考えると分かりやすいだろう。
かつて、技術力で抜けていた日本の家電メーカーは隆盛を誇っていた。次々とイノベーションを起こしたSONYなどがいい例だろう。
しかし、技術力の差が少なくなり、iphoneのように機能でもデザインでも、ジョブズの卓越したセンスが昇華された製品が世の中を席巻した。それは、ユーザーの求めている物が技術や機能だけではなくなってきたといえるだろう。
製品の持つ技術に大きな差がなければ、その中で機能の取捨選択やデザイン性など、よりユーザーにとっての製品を最適化しなければならないといえ、そのためにはセンスが必要ということだ。
センスは知識からはじまる
では、そのセンスはどうやって身についていくのだろうか?
センスとは知識の集積である。
これは、良いセンスを持つには知識を蓄え、過去に学ぶ物が大切だということを意味している。
これについては、僕もなるほどと思う部分が多い。
過去に学び、知識を蓄えることで、様々なものを比較することが出来るし、新しいものが出てきたときに、今のものと比較することでより新しい物の価値を理解することができる。
言われてみると、なんてことはないことなので、頭の中にはなんとなくイメージはあるが、こうやって言葉で論理的に分かるように説明されると、腑に落ちて向き合い方や姿勢も変わってくる。
僕は、デザインやクリエイティブに対して苦手だし、自分とは関係のない世界のものだと思っていた。
しかし、この本を読んでデザインの本を読んだり、デザイナーにいろいろとデザインの意図やデザインの知識について質問するようになったことで、少しづつデザインに対しての苦手意識がなくなってきたし、センスも良くなってきたと思っている。
センスを磨く
思い込みを捨てて客観的情報を集めることこそ、センスを良くする大切な方法です。
偏った価値観や情報の集積はセンスを磨くことには、繋がらない。
SNSやネットニュースなど情報の取捨選択が容易になっている現代のライフスタイルは諸刃の剣だ。
大量の情報の取捨選択が容易であるがゆえに、取得する情報が自身の価値観に偏る傾向に陥りやすいことと情報自体が客観性のあるものよりもデフォルメされているものやそれ自体が事実でない可能性があるからだ。
しかし、間違いなくインターネットが普及する前よりも様々な情報に簡単に触れることが出来る我々は、先人たちよりもセンスを磨く環境が整っているといえるだろう。
だからこそ、センスは特別な人に備わった才能なんだと思って諦めている人は、誰にでも等しくあるものだと思い、少しづつでも磨いていこうと思って欲しい。
この本の内容は、頭の中にはなんとなくイメージはあるが、こうやって言葉で論理的に分かるように説明されると、腑に落ちて向き合い方や姿勢も変わってくる。
僕は、マーケティングの業務に携わる前にデザインやクリエイティブに対して苦手だし、自分とは関係のない世界のものだと思っていた。
しかし、この本を読んでデザインの本を読んだり、デザイナーからデザインの意図を聞いたり、実際にいろんなデザインを苦手意識を持たずにフラットに見てきたことで、センスが磨かれてきたと思っている。
もちろん、周りにいるデザイナーやクリエイターのおかげでもあるが、そういう姿勢になったのはこの本のおかげだ。