地球温暖化問題という言葉はよく聞くけれども、どんな問題なのか?なぜ起きているのか?という部分を数回に分けて掘り下げていくシリーズ。
vol.1の投稿では、温暖化問題の主要因である温室効果ガスというものにフォーカス。
vol.2ではどのような歴史的な背景があるのかにフォーカス。
3回目の今回は、産業革命以降の社会や産業の構造、ライフスタイルの変化によって、CO2の排出が増加したことが要因であることを踏まえて、今の地球の大気はどんな状況なのかについて取り上げていきたいと思います。
排出源と吸収源
温暖化を見るときの考え方として、大気中のCO2が増えているのか、減っているのかを炭素(C)の視点での収支・炭素収支があります。
この増減に影響するのが、一般的に吸収源、排出源と呼ばれる2つの要素です。
吸収源
文字通り、CO2を吸収している要素のことです。これは、大きくは陸域の植物の光合成よるものと海洋が吸収するものの2つがあります。
排出源
これも文字通り、CO2を排出している要素のことです。これは、我々の人為的なCO2の排出が主な要因です。
冒頭でも触れているように産業革命以降の現代につながる大量生産、大量消費につながる社会構造、産業構造によって、化石燃料(石油、石炭など)が大量に消費されるようになったことや乱開発による森林伐採などによる土地利用変化などが大きな割合を締めています。
地球の炭素収支
*IPCC AR5より作成
現在の地球の1年あたりの吸収源のCO2吸収量は、炭素に換算すると約50億tです。その内訳は、陸域・主に植物の光合成によるもので約25±13億tと海洋・海にCO2が溶け出すことによるもので約24±7億t。
一方、CO2排出量は、こちらも炭素換算で約100億tです。その内訳は、化石燃料の消費などの人間活動によるもの(産業や生活も含めて)で約83±7億t、土地利用変化(森林伐採など)で約9±8億t。
これらを収支で見ると、毎年約50億tの炭素が増加するという状況で排出量が吸収量の倍のレベルになっているのが、現状です。
家計で言えば、月に50万円の収入があったとしても、支出が100万あって毎月50万円の赤字をだしているようなイメージです。
産業革命以降の累計
産業革命の初期の1750年〜現在(2011年現在)までの約250年で、大気中のCO2は約2,400±100億t増加したされています。
先程の年間の吸収量で考えると、仮に人類のCO2排出量がこれから0になったとしても、産業革命前の状態に戻るまでに単純計算で約50年かかります。
現実的に排出が0になることはまずないので、温暖化問題の影響をこれから受けていくことは避けられないのが現状です。
影響を受ける前提でそれをどれだけ”緩和”出来るのか、あるいはその状況に対して対応(”適応”)していくかというのが、これからの人類の大きな課題と言えます。
今後のリスク
海洋の吸収力の低下
海洋は、CO2だけでなく、人為的に排出されたあるいは温室効果による熱を吸収しています。二酸化炭素は、水の温度が高くなると水に溶けにくいという性質を持つので、海水温の上昇によってCO2の吸収量が減少する可能性もあります。
ただ、海洋の場合、容器にいれた水と違い、海流の循環や風など様々な要素が複雑に絡んでいるため、まだはっきりとは解明されていません。
CO2の吸収・熱の吸収にも海洋の果たしている役割が大きい一方で、海洋の酸性化や海水温の上昇など今まででは見られなかった異常が海洋で起きていることも事実で、今後も安定した吸収源として機能するのかという点においては、不確定要素という意味でリスクがあるといえます。