環境問題の話でよく出てくる人間の排出した二酸化炭素(CO2)を吸収してくれる植物やサンゴ(サンゴは動物)の存在。
植物が、光合成によって太陽の光と二酸化炭素から酸素を出すということは学校の授業で習いますが、なぜ植物が二酸化炭素を吸収するのか?その構造を取り上げてみたいと思います。
光合成と呼吸
光合成は、光のエネルギーを使って有機物(糖)に変換することで、その有機物は植物の成長に不可欠です。
人間にとっての食事に近いイメージです。ただ、光合成だけで十分ではなく、土の中の養分(主にN:窒素、P:リン、K)を根から吸収します。
それと同時に植物は、呼吸もしています。
光合成は”CO2を吸収して酸素を排出する”、呼吸は”酸素を吸収してCO2を排出する”。
と、一見相反して矛盾しているように見えますが、それぞれは違う役割を持っています。
光合成は食事のようなイメージだとすると、呼吸の目的は、光合成で作った有機物をエネルギーとして、消費するために酸素を使います。これは、動物でも植物でも同様です。
光合成は自分の体を作るためのもの、呼吸は活動をするためのものとそれぞれ違う役割があり、それぞれの活動の副産物が酸素と二酸化炭素であるため、酸素と二酸化炭素の関係の視点で相反するようなものに見えてしまいます。
光合成のあとの炭素はどうなるのか?
炭素はストックされる
化学式だと、上のような式になります。
この炭素が含まれている有機物が植物の幹や根、枝葉となって、植物の組織に固定されるような状態となるため、”炭素固定”と呼ばれています。これが一般に言う、植物が二酸化炭素(CO2)を吸収していると言われる所以です。
植物が生長すると、当然それによって幹や枝などが太くなるので固定される炭素、つまりその元となる空気中の二酸化炭素が吸収された量も増えていきます。
仮に植物が死んでしまった場合でも、生長はしないので固定される炭素の量は増えませんが、木材で建築などに使われた場合、その木材に含まれる炭素は固定されたままの状態なので、炭素の固定という意味では役割を継続しています。
そして、そこに新たに木を植えることで、前に生えていた木が固定した炭素をキープしながら、新しく植えた木が成長過程でCO2から炭素を固定するため、ただ木を生やしておくよりもCO2の吸収という意味で(一時的なストック)
国産材などで、よく木材を使うことが地球環境の保全に役立つと言われるのは、このような意味からです。
仮に燃えてしまったら?
山火事などで燃えてしまった場合、それまで固定された炭素もろとも二酸化炭素として大気に放出されてしまうため、樹齢何百年のどんなに大きな木だろうと今まで吸収した分はゼロになってしまいます。
厳密には落ち葉や燃え残りなどが地面に分解しきらずに土壌として堆積されたりしますが、大部分は大気に放出されてしまいます。
山火事以外にも森林を伐採して燃料に使われ、伐採されたあとの土地に植林などがされずに、農地や開発に土地利用が変化する場合も今まで森林がキープしていた炭素が、CO2として大気に放出されてしまいます。
このような土地利用の変化は、温暖化問題でも大きな問題になっていて、アマゾンの熱帯林の伐採など、農業や土地利用変化による温室効果ガスの排出は、全体の約2割を占めていると言われています。
図書館は巨大な炭素貯蔵庫
伐採された後でも、木材が炭素を固定しているように、元々木から作られている紙も同様に炭素を固定した状態と言えます。そのため、本の状態で保管されているということは大気中のCO2を固定して貯蔵していることになります。
なので、図書館は本だけでなく、CO2を貯蔵している場所ともいえます。
その視点で見ると、歴史の中で行われた焚書(ふんしょ)と呼ばれる権力者が書物を焼却する行為はある種の環境破壊です。例えば、古代中国の秦の始皇帝は、焚書坑儒と呼ばれる儒教への弾圧で大量の書物を燃やしてしまいました。
この行為の思想的な部分は置いておいて、あくまで大量の書物を燃やしたという点に置いては、一気にCO2を大気に放出させちゃいましたね。ということになるわけです。
まとめ
この植物の炭素固定を温暖化問題への対策として役立てるのには、日本に暮らす一般市民の場合は、自分たちの国の、すなわち国産の森林資源をもっと活用していくことが重要です。
大前提として、日本は国土の67%、実に2/3が森林という森林国ですが、木材などの多くは輸入材に頼っています。
一方で、林業の衰退が叫ばれているように国内に多くの森林があるにも関わらず、その森林資源をうまく活用できていないのが現状です。
日本人全員が一気に国産材を積極的に使い出したら、日本の森はすぐにはげ山になりますが、現状で資源が有効活用されていないのは非常にもったいない状況です。
海外産に比べて、価格がどうしても高くなる国産材ですが、品質や国内の雇用という観点だけでなく、環境面という部分での付加価値を見出して自分の生活に取り込んでみてはどうでしょう?